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日商簿記3級は、2027年4月1日以降の試験から、新しい出題区分表(出題範囲)で出題されます。日本商工会議所が2026年7月31日に確定版を発表しました。統一試験・ネット試験・団体試験のすべてが対象です。
大きな理由は2つあります。ひとつは、紙の手形・小切手の廃止です。日本商工会議所の説明によると、全国銀行協会は2025年3月に、2026年度末で電子交換所での手形・小切手の交換を廃止すると決めています。もうひとつは、新しいリースの会計基準の適用です(こちらは主に2級以上に関係します)。
この記事では、日本商工会議所が公表した「改定項目等の説明書(確定版)」と、2027年度の出題区分表・勘定科目表をもとに、3級で何が変わり、何が変わらないかを整理します。そのうえで、今から勉強を始める人がいつまでに受けるかの考え方をまとめました。情報は2026年11月2日時点で、日本商工会議所の公式サイトで確認したものです。説明のための仕訳の例は、この記事のために作ったものです。
2027年度の改定で3級の何が変わるか(早見表)

| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 削除 | 「手形」の項目(約束手形の振出し・受入れ・取立て・支払い、受取手形記入帳・支払手形記入帳、手形貸付金・手形借入金など)と「債権の譲渡」の項目(この項目にあったクレジット売掛金は「売掛金および買掛金ならびに電子記録債権等」に移って残る) |
| 2級から3級へ移る | ① 販売のつど売上原価勘定に振り替える方法(売上原価対立法) ② 有形固定資産の除却・廃棄 ③ 定率法(償却率を示すなど簡易な出題にとどめる) |
| 書き方が変わる | 「普通預金」を区分表に明記(当座預金より先に)。「売掛金と買掛金」が「売掛金および買掛金ならびに電子記録債権等」になる。クレジット売掛金に「キャッシュレス決済を含む」と追記 |
| 配点 | 第1問45点・第2問25点・第3問30点(合計100点、70点以上で合格) |
| 変わらない | リースは3級の範囲外のまま。支払家賃・支払地代・受取家賃・受取地代は従来どおり賃貸借の処理で出題。電子記録債権・電子記録債務の出題内容も変更なし。合格基準は70点以上 |
出典:日本商工会議所「紙媒体による手形・小切手の廃止および企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の適用にともなう商工会議所簿記検定試験出題区分表などの改定について【確定版】」(2026年7月31日)、「2027年度以降の日商簿記3級試験問題の配点について」(2026年9月25日)、2027年度適用の出題区分表・標準・許容勘定科目表。
日本商工会議所は、手形の廃止で主に3級の出題内容が減るため、2級の一部の論点を3級に移した、と説明しています。あわせて、3級は「事実上の入門・基礎段階の学習者が対象」であることを考え、出題には十分に留意する、とも書いています。
いつから・いつまでの試験が対象か
| 試験を行う日 | 使われる出題区分表 | 配点 |
|---|---|---|
| 2027年3月31日まで(2026年度の試験) | 2022年度版(今の区分表) | 従来の配点 |
| 2027年4月1日から(2027年度の試験) | 2027年度版(新しい区分表) | 第1問45点・第2問25点・第3問30点 |
日本商工会議所は、「2026年度は2022年度適用の出題区分表に基づいた出題となります」と、今年度の試験は今の範囲のままであることをはっきり書いています。新しい区分表は、2025年12月25日に暫定版が出て、2026年7月31日に確定版になりました。
手形がなくなる:3級でいちばん大きい変更

削除される項目
今の3級の出題区分表には、「手形」として、約束手形の振出し・受入れ・取立て・支払い、受取手形記入帳と支払手形記入帳、手形貸付金・手形借入金が入っています。2027年度の区分表では、これらの手形に関する規定がすべて削除されます。「債権の譲渡」の項目も削除されますが、3級でこの項目に入っていたクレジット売掛金は、「売掛金および買掛金ならびに電子記録債権等」の中に移って残ります。
2027年度の「標準・許容勘定科目表」を見ても、3級・2級の欄に「手形」が付く勘定科目は載っていません。今の範囲で勉強している人がよく使う「受取手形」「支払手形」は、4月以降の3級では使わない科目になります。
電子記録債権・電子記録債務は残る
一方、電子記録債権・電子記録債務は残ります。区分表では、「売掛金と買掛金」の項目が「売掛金および買掛金ならびに電子記録債権等」に改められ、その中に入りました。日本商工会議所は、電子記録債権・電子記録債務は売掛金・買掛金が形を変えたものと捉えて同じ項目に置いた、と説明しています。出題内容に変更はないとも書かれています。
紙の手形がなくなると、企業の実務では電子記録債権の取引が増えると見込まれています。3級の勉強でも、電子記録債権の発生と決済の仕訳は、これまで以上にしっかり押さえておく価値があります。
普通預金とクレジット売掛金の書き方
現金預金の項目には、普通預金が当座預金より先に明記されました。説明書によると、普通預金は企業で広く使われているのに区分表に書かれていなかったため、追加したということです。
当座預金については、説明書に「小切手を振り出すことがなくなった以上、当座預金の重要性は低下するものと考えられる」としたうえで、電子記録債務の支払いに当座預金口座が求められることもあるなど、存在意義は引き続き残る、と書かれています。なお、3級の区分表には小切手だけを取り上げた項目はなく、4月以降の3級で小切手が問題文にどう出てくるかについては、公式資料に具体的な記載は見つかりませんでした。
クレジット売掛金には「キャッシュレス決済を含む」と追記されました。クレジットカードだけでなく、さまざまなキャッシュレス決済で生じた代金も、この勘定で扱うことをはっきりさせるためです。
どんな問題が出るか、ためしに1問解いてみてください。その場で答え合わせができます。
2級から3級に移る3つの論点

① 売上原価対立法:売るたびに原価を記録する
今の3級では、商品の売買を「3分法」で処理します。仕入れたときは「仕入」、売ったときは「売上」を書き、売った商品の原価(売上原価)は決算でまとめて計算します(「しーくりくりしー」の仕訳)。
新しく3級に入る売上原価対立法(区分表の書き方では「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法」)は、商品を売るたびに、その原価を「売上原価」に振り替える方法です。2027年度の勘定科目表では、3級の標準の科目に「商品」が加わっています。
例:原価60,000円の商品を掛けで仕入れ、それを100,000円で掛けで売った。
| 時点 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 仕入れたとき | 商品 60,000 | 買掛金 60,000 |
| 売ったとき | 売掛金 100,000 | 売上 100,000 |
| 売上原価 60,000 | 商品 60,000 |
売ったときに2つの仕訳をするのがポイントです。1つ目は今までと同じ売上の仕訳、2つ目で、売れた商品の原価を「商品」(資産)から「売上原価」(費用)に移します。売るたびに原価を記録しているので、3分法のように決算で売上原価をまとめて計算する仕訳は要りません。
日本商工会議所は、移す理由として、売上原価を決算まで把握しないのは企業経営の観点から健全とは言えないこと、実務でもこの方法をとる例が増えていること、3級ではすでに商品有高帳で販売時の原価を記帳していることを挙げています。
② 有形固定資産の除却・廃棄
建物や備品などの除却は、使い終わった固定資産を帳簿から外すこと、廃棄は捨てることです。今の3級では固定資産の「取得」「売却」「減価償却」までが範囲で、除却・廃棄は2級でした。日本商工会議所は、耐用年数が来て除却したり、不用なものを廃棄したりするのは企業で一般的に行われることだから、と理由を説明しています。2027年度の勘定科目表では、3級の標準の科目に「固定資産除却損」が加わっています。
例:取得原価400,000円、減価償却累計額360,000円の備品を除却した。処分しても価値はないものとする。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 360,000 | 備品 | 400,000 |
| 固定資産除却損 | 40,000 |
左の合計は360,000円+40,000円=400,000円で、右と一致します。帳簿に残っていた価値(400,000円−360,000円=40,000円)が、そのまま損(費用)になります。売却の仕訳と形が似ていて、受け取るお金がないぶん、全額が損になる、と考えるとわかりやすくなります。
③ 定率法(簡易な出題だけ)
減価償却の方法は、今の3級では毎年同じ額を費用にする定額法だけです。新しく入る定率法は、まだ償却していない残りの額(未償却残高)に毎年同じ率をかける方法で、最初の年ほど費用が大きくなります。
例:期首に取得した備品(取得原価500,000円)を、定率法(償却率20%)で償却する。2年目の決算の仕訳。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 80,000 | 備品減価償却累計額 | 80,000 |
1年目は500,000円×20%=100,000円。2年目は、残りの(500,000円−100,000円)×20%=80,000円です。仕訳の形は定額法と同じで、違うのは金額の計算だけです。
日本商工会議所は、3級の定率法は基本的な仕組みの理解が目的で、償却率を問題で示すなど簡易な出題にとどめるとしています。法人税法の「200%定率法」の保証率や改定償却率にかかわる問題は、3級では出さないと明記しています。
今の3級の減価償却(定額法・間接法)と、決算の仕訳の考え方は簿記3級の仕訳の覚え方で説明しています。
配点の変更と、変わらないこと

配点は第1問45点・第2問25点・第3問30点
日本商工会議所は2026年9月25日、2027年4月1日以降に行う3級の試験(ネット試験・統一試験・団体試験)の配点を、第1問45点・第2問25点・第3問30点(合計100点、合格基準70点以上)にすると発表しました。2027年3月31日までは従来の配点が適用されます。1級・2級・簿記初級・原価計算初級の配点と出題形式は変わりません。
なお、2027年3月までの「従来の配点」が大問ごとに何点かは、日本商工会議所の公式サイトでは確認できませんでした(2026年11月2日時点)。新しい配点での目標点の例と時間配分は、簿記3級の合格点と配点の記事でまとめています。
リースは3級の範囲外のまま
今回の改定のもうひとつの柱である新しいリースの会計基準は、主に2級以上の話です。説明書では、3級ではリースは出題範囲ではないこと、3級で扱う事務所や店舗の家賃・土地の地代は、引き続き「支払家賃」「支払地代」を使った賃貸借の処理で出題されることが書かれています。受取家賃・受取地代も同じです。3級で家賃の仕訳を覚え直す必要はありません。
基本の考え方は変わらない
改定で変わるのは、範囲の端の部分です。5つの要素(資産・負債・純資産・収益・費用)の左右のルール、期中の取引の仕訳、決算整理、精算表・財務諸表の作り方といった3級の中心部分は、区分表の上でも変わっていません。今まで勉強した内容の大半は、4月以降もそのまま使えます。
今から受ける人は、いつまでに受けるか

今の範囲で受けられる最後の日程
| 試験 | 今の範囲で受けられる日程 | 注意 |
|---|---|---|
| 統一試験 | 第174回(2026年11月15日)、第175回(2027年2月28日) | 第174回の申込みは終了。第175回の申込みは1月中旬頃から各地の商工会議所で。第175回を行わない商工会議所もある |
| ネット試験 | 2027年3月31日まで随時 | 休止期間(2026年11月9日〜18日、2027年2月22日〜3月3日)は受けられない |
出典:日本商工会議所「2026年度試験日程カレンダー」「ネット試験について」、第174回の受付終了のお知らせ。第175回を行わない例として、京都商工会議所は2026年度の要項で第175回を施行しないとしています。
今の範囲の最後の統一試験は2月28日、ネット試験は3月31日までです。2027年4月1日以降に受ける試験は、すべて新しい範囲になります。2027年度の試験日は、まだ発表されていません(2026年11月2日時点)。
どちらで受けるかの判断
今(11月)から勉強を始める人は、次のように考えるのがおすすめです(この記事の推奨です)。
- 3月までに100時間ほどとれる人:今の範囲で、2月の統一試験か、3月までのネット試験で受ける。11月からなら1日1時間前後で間に合います
- すでに今の範囲で勉強を進めている人:3月までに受けきる。4月以降に持ち越すと、手形の部分が不要になる一方、対立法・除却・定率法を追加で覚えることになります
- 1日の時間が少ない人、春以降にゆっくり受けたい人:最初から2027年度の範囲で勉強し、4月以降に受ける
どちらでも合格の価値は同じです。大事なのは、受ける日の範囲に合ったテキストで勉強することです。勉強時間の目安と、1〜3ヶ月のスケジュールは簿記3級の勉強時間とスケジュールにまとめています。
3月までに間に合わなかったときの「差分」
今の範囲で勉強していて、3月までに受けられなかった(または合格に届かなかった)場合、4月以降の試験に向けて手を入れるのは次の部分です。区分表の改定内容をもとに、この記事で整理しました。
| やること | 対象 | 目安 |
|---|---|---|
| やらなくてよくなる | 約束手形の振出し・受入れ・取立て・支払い、受取手形記入帳・支払手形記入帳、手形貸付金・手形借入金 | 手形の問題は飛ばしてよい |
| 新しく覚える | 売上原価対立法(商品・売上原価の科目)、固定資産の除却・廃棄(固定資産除却損)、定率法の計算 | どれも仕訳の形は短い。計算と科目名を押さえる |
| 確かめ直す | 電子記録債権・債務、普通預金・当座預金、クレジット売掛金 | 出題内容は変わらないが、手形の代わりに出番が増えると考えて練習しておく |
| そのまま使える | 5要素と左右のルール、期中取引の仕訳、3分法と売上原価の算定、決算整理、精算表・財務諸表 | 今までの勉強が土台になる |
※「目安」はこの記事の推奨です。3分法による売上原価の算定(しーくりくりしー)は、2027年度の区分表でも3級に残っています。対立法が加わっても、3分法がなくなるわけではありません。
差分は「手形が抜けて、3つが加わる」形です。ただ、4月以降の問題でどのような形で出るかは、まだ実際の出題がないのでわかりません。新しい範囲の問題集で、追加の3つを含む問題を一度は解いてから受けるのがおすすめです。
テキスト・問題集は「受ける日」で選ぶ
3月までに受けるなら、今の範囲(2022年度適用の区分表)に対応したテキスト。4月以降に受けるなら、2027年度の範囲に対応したテキストを選びます。日本商工会議所は、テキストや問題集を作るための期間を確保するため、新しい区分表を早めに公表したと説明しています。書店で選ぶときは、表紙や奥付で何年度の試験に対応しているかを必ず確かめてください。中古のテキストや、人から譲ってもらったテキストは特に注意が必要です。
スキマ時間に仕訳と決算を進めたい人は、学習アプリ「ごうかくっ!」が使えます。簿記3級の動画レッスンは全62本・1本3分前後で、リスのキャラクター「ボキりす」が黒板で1テーマずつ説明します。問題は5分野(基礎・取引の仕訳・帳簿・決算・財務諸表)のオリジナル問題540問で、選択肢ごとに解説が付いています。学習マップと「今日の3問」もあり、登録は無料です。なお、いまの問題と動画は2027年3月までの試験範囲(手形を含む)に合わせています。4月以降に受ける人は、仕訳の基本の練習に使いつつ、改定で増える論点は2027年度版のテキストで確認してください。
よくある質問

Q. 2026年11月や2027年2月の試験に、改定の内容は出ますか?
出ません。日本商工会議所は、2026年度(2027年3月31日まで)の試験は2022年度適用の出題区分表に基づいて出題すると明記しています。新しい範囲は2027年4月1日以降の試験からです。
Q. 今の範囲で勉強した手形の知識は、4月以降は無駄になりますか?
3級の試験では、手形の項目は4月以降は出題範囲から外れます。ただ、手形の仕訳は「受け取る権利(資産)」「払う義務(負債)」という、売掛金・買掛金や電子記録債権・債務と同じ考え方でできています。考え方そのものは、ほかの論点を理解する助けになります。
Q. 2級の改定はどうなりますか?
2級でも、手形の削除のほか、新しいリースの会計基準に合わせた変更などがあります。2級では不動産の賃借も含めてリースの処理が出題対象になり、賃貸借として処理する場合も支払家賃・支払地代ではなく「支払リース料」に統一される、と説明書に書かれています。2級を受ける予定の人は、日本商工会議所の説明書で2級の変更点も確かめてください。3級と2級の違いは日商簿記3級・2級の違いと選び方で整理しています。
Q. 改定のあと、3級はむずかしくなりますか?
日本商工会議所は、むずかしさが変わるかどうかについては書いていません。手形の項目が減り、2級から3つの論点が移ってくる一方で、3級は入門・基礎段階の学習者が対象であることを考えて出題には十分に留意する、としています。定率法も簡易な出題にとどめると明記されています。
まとめ

- 2027年4月1日以降の3級の試験は、新しい出題区分表(2026年7月31日確定)で出題される。統一・ネット・団体のすべてが対象。2027年3月31日までは今の範囲
- 手形の項目と債権の譲渡の項目が削除。電子記録債権・債務は残り、出題内容も変わらない
- 売上原価対立法、有形固定資産の除却・廃棄、定率法(簡易な出題のみ)が2級から3級へ移る
- 配点は第1問45点・第2問25点・第3問30点に。合格基準は70点以上のまま
- リースは3級の範囲外のまま。家賃・地代は従来どおりの賃貸借の処理
- 今の範囲で受けられるのは、統一試験が2月28日まで、ネット試験が3月31日まで(休止期間を除く)。テキストは受ける日の範囲に合わせて選ぶ
受ける時期を決めたら、毎日の仕訳の練習から始めましょう。「ごうかくっ!」のオリジナル問題540問と「今日の3問」を、無料登録で試してみてください。
3級と2級の違い、試験の全体像は、日商簿記3級・2級の違いと選び方にまとめています。





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