簿記3級の仕訳の覚え方|借方・貸方と5要素の左右ルール、つまずく取引を例題で解説

簿記3級の仕訳の覚え方 個別資格

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簿記3級の勉強で、最初にして最大の山が仕訳です。「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」という言葉からしてわかりにくく、取引ごとに左右を丸暗記しようとして手が止まる人が少なくありません。

結論から書くと、仕訳は5つの要素(資産・負債・純資産・収益・費用)が「増えたら左か右か」を覚えれば、ほとんどの取引を自分で組み立てられます。覚えるのは、取引の数ではなく、5つの要素のルールです。

この記事では、まず借方・貸方と5要素のルールを1枚の表にまとめます。そのうえで、つまずきやすい取引(前払・未払・前受・未収、貸倒れ、売上原価の算定、減価償却)を、この記事のために作った例題で1つずつ説明します。例題の会社名や金額はすべて架空のものです。勘定科目の名前は、日本商工会議所の「標準・許容勘定科目表」の標準の書き方に合わせています。

仕訳とは:取引を左と右に分けて書くこと

仕訳とは:取引を左と右に分けて書くこと

借方は左、貸方は右

仕訳は、会社のお金やモノが動いた取引を、左(借方)と右(貸方)の2つの側面に分けて書く作業です。「借」「貸」という字に意味はないので、借方=左、貸方=右とだけ覚えてください。ひらがなの「かりかた」の「り」が左にはらう形、「かしかた」の「し」が右にはらう形、という覚え方もよく使われます。

たとえば「商品を50,000円で仕入れ、代金は後で払うことにした」という取引には、「商品を仕入れた」と「後で払う義務が増えた」の2つの面があります。これを左右に分けて書くと、次のようになります。

借方(左) 金額 貸方(右) 金額
仕入 50,000 買掛金 50,000

どの取引でも、左の合計と右の合計は必ず同じ金額になります。これを「貸借平均の原理」といい、3級の出題範囲にも入っている基本のルールです。仕訳を書いたら、左右の合計が一致しているかを毎回確かめる習慣をつけてください。

勘定科目は「5つのグループ」のどれかに入る

「仕入」「買掛金」のような項目の名前を勘定科目といいます。3級で使う勘定科目はたくさんありますが、すべて次の5つのグループのどれかに入ります。

グループ 意味 勘定科目の例
資産 会社が持っている財産や、将来お金を受け取る権利 現金、普通預金、売掛金、貸付金、備品、建物、未収入金、前払金
負債 将来お金を払う義務 買掛金、借入金、未払金、前受金、預り金
純資産 資産から負債を引いた、会社自身のもの 資本金、繰越利益剰余金
収益 もうけのもとになる収入 売上、受取手数料、受取家賃、受取利息
費用 収益を得るために使ったもの 仕入、給料、支払家賃、水道光熱費、保険料、支払利息

資産・負債・純資産は貸借対照表(会社の財産の状態を表す表)に、収益・費用は損益計算書(1年間のもうけを表す表)に載ります。この2つの表の作り方も3級の範囲ですが、まずは「どの科目がどのグループか」を言えるようにするのが先です。

5要素の左右ルール:これだけ覚えれば組み立てられる

5要素の左右ルール:これだけ覚えれば組み立てられる

増えたら定位置、減ったら反対側

5つのグループには、それぞれ「増えたときに書く側」=定位置があります。減ったときは、その反対側に書きます。

グループ 増えた(発生した)とき 減った(なくなった)とき
資産 借方(左) 貸方(右)
負債 貸方(右) 借方(左)
純資産 貸方(右) 借方(左)
収益 貸方(右) 借方(左)
費用 借方(左) 貸方(右)

覚え方は、「左に来るのは資産と費用だけ」です。資産と費用は増えたら左、それ以外の3つ(負債・純資産・収益)は増えたら右。これだけ覚えれば、残りは「減ったら反対」で決まります。

貸借対照表と損益計算書の形で覚える

このルールは、2つの表の形と同じです。貸借対照表は、左に資産、右に負債と純資産が並びます。損益計算書は、左に費用、右に収益が並びます。つまり、各グループの定位置は、表に載る側と同じです。

  • 貸借対照表:左=資産/右=負債・純資産
  • 損益計算書:左=費用/右=収益

表の形を1回描けるようにしておくと、試験中に迷ったときにも、余白に描いて確かめられます。

仕訳を組み立てる3つの手順

初めて見る取引でも、次の3つの手順で組み立てられます。

  • 手順1:取引で動いたものを2つ(以上)見つける。「お金が減った」「備品が増えた」など
  • 手順2:それぞれの勘定科目と、5つのグループのどれかを決める
  • 手順3:増えたか減ったかで、左右を決める。最後に左右の合計を確かめる

例:「事務所の家賃80,000円を普通預金から支払った」

  • 動いたもの:家賃を払った(費用の発生)、普通預金が減った(資産の減少)
  • 費用の発生→左に「支払家賃」、資産の減少→右に「普通預金」
借方(左) 金額 貸方(右) 金額
支払家賃 80,000 普通預金 80,000

基本の仕訳を5つ練習する

同じ手順で、よく出る形の取引を5つ並べます。まず自分で左右を考えてから、表を見てください。

取引(例題) 借方(左) 貸方(右)
① 商品120,000円を売り上げ、代金は普通預金に振り込まれた 普通預金 120,000 売上 120,000
② 銀行から300,000円を借り入れ、普通預金に入金された 普通預金 300,000 借入金 300,000
③ 従業員の給料200,000円を普通預金から支払った 給料 200,000 普通預金 200,000
④ 事務用の机(備品)250,000円を買い、代金は来月払うことにした 備品 250,000 未払金 250,000
⑤ 先月掛けで売った代金90,000円が普通預金に振り込まれた 普通預金 90,000 売掛金 90,000

④で「買掛金」ではなく「未払金」を使うのは、備品が商品ではないからです。商品の売り買いの後払い・後受け取りは買掛金・売掛金、それ以外は未払金・未収入金、と分けて覚えます。3級で迷いやすいポイントのひとつです。

どんな問題が出るか、ためしに1問解いてみてください。その場で答え合わせができます。

つまずきやすい取引①:前払・未払・前受・未収

つまずきやすい取引①:前払・未払・前受・未収

決算のときに出てくる「前払・未払・前受・未収」は、3級で多くの人が苦手にするところです。日本商工会議所の出題区分表でも、決算整理の項目として「収益・費用の前受け・前払いと未収・未払い」が挙げられています。

考え方の芯はひとつです。お金を払った・受け取った時期と、その費用・収益が「当期のもの」かどうかがずれているとき、決算でずれを直す。以下の例題は、会計期間を4月1日〜3月31日とします。

前払:まだ来ていない期間の費用を先に払った

例題:12月1日に、1年分の保険料120,000円を普通預金から支払った。決算日は3月31日。

12月1日の支払時は、全額を費用(保険料)にしています。

時点 借方(左) 貸方(右)
12月1日(支払時) 保険料 120,000 普通預金 120,000
3月31日(決算) 前払保険料 80,000 保険料 80,000

12月〜3月の4ヶ月分は当期の費用ですが、4月〜11月の8ヶ月分は来期の費用です。120,000円×8/12=80,000円を、決算で保険料(費用)から減らし、「前払保険料」(資産)に移します。前払保険料が資産なのは、「来期に保険のサービスを受けられる権利」だからです。

未払:当期に使ったのに、まだ払っていない

例題:借入金の利息は、毎年9月末に1年分を後払いする約束。決算日の3月31日時点で、10月〜3月の6ヶ月分の利息6,000円がまだ支払われていない。

時点 借方(左) 貸方(右)
3月31日(決算) 支払利息 6,000 未払利息 6,000

当期にお金を借りていた期間の利息は、払っていなくても当期の費用です。そこで支払利息(費用)を左に計上し、「まだ払っていない義務」として未払利息(負債)を右に書きます。

前受:まだ来ていない期間の収益を先に受け取った

例題:2月1日に、貸している駐車場の3ヶ月分(2月〜4月)の地代90,000円が普通預金に振り込まれた。決算日は3月31日。

時点 借方(左) 貸方(右)
2月1日(受取時) 普通預金 90,000 受取地代 90,000
3月31日(決算) 受取地代 30,000 前受地代 30,000

2月・3月の2ヶ月分は当期の収益ですが、4月分の30,000円は来期の収益です。決算で受取地代(収益)を減らし、「前受地代」(負債)に移します。前受地代が負債なのは、「来期に土地を貸す義務」が残っているからです。

未収:当期に稼いだのに、まだ受け取っていない

例題:取引先に貸しているお金の利息のうち、当期分4,000円をまだ受け取っていない(受け取るのは来期の約束)。

時点 借方(左) 貸方(右)
3月31日(決算) 未収利息 4,000 受取利息 4,000

4つを1枚にまとめる

種類 どんな状態か 決算で使う科目 その科目のグループ
前払(費用) 来期分の費用を先に払った 前払保険料・前払家賃など 資産
未払(費用) 当期分の費用をまだ払っていない 未払利息・未払家賃など 負債
前受(収益) 来期分の収益を先に受け取った 前受地代・前受家賃など 負債
未収(収益) 当期分の収益をまだ受け取っていない 未収利息・未収家賃など 資産

「将来もらえる」ものは資産、「将来払う・提供する」ものは負債、と考えると、4つのグループ分けは覚えなくても決まります。なお、ここで出てくる前払保険料などは、期中の取引で使う「前払金」「前受金」(商品代金の手付金など)とは別の科目なので、混ぜないようにしてください。

決算で作った前払・未払などは、来期の最初の日に逆の仕訳(再振替仕訳)をして元に戻します。保険料の例なら、4月1日に「保険料 80,000/前払保険料 80,000」です。

つまずきやすい取引②:貸倒れ・売上原価・減価償却

つまずきやすい取引②:貸倒れ・売上原価・減価償却

貸倒れ:売掛金が回収できなくなった

得意先が倒産するなどして、売掛金が回収できなくなることを貸倒れといいます。3級では、前の期の決算で「貸倒引当金」を設定していたかどうかで仕訳が変わります。

例題:前期に掛けで売った売掛金30,000円が貸倒れた。貸倒引当金の残高は20,000円。

借方(左) 金額 貸方(右) 金額
貸倒引当金 20,000 売掛金 30,000
貸倒損失 10,000

左の合計は20,000円+10,000円=30,000円で、右の30,000円と一致します。引当金で足りない10,000円は「貸倒損失」(費用)です。もし当期に売った売掛金が貸倒れた場合は、前期の決算で引当金を見込んでいないので、全額を貸倒損失にします。

決算では、来期の貸倒れに備えて引当金を設定します。例題:期末の売掛金残高400,000円に対して2%の貸倒引当金を設定する。決算前の貸倒引当金の残高は3,000円。

借方(左) 金額 貸方(右) 金額
貸倒引当金繰入 5,000 貸倒引当金 5,000

必要な額は400,000円×2%=8,000円。すでに3,000円あるので、足りない5,000円だけを積み増す(差額補充法)のがポイントです。8,000円をそのまま書くミスがよくあります。

売上原価の算定:「しーくりくりしー」

3級の商品売買は、仕入れたときに「仕入」(費用)、売ったときに「売上」(収益)を書く方法(3分法)で処理します。この方法では、期中に「売った商品の原価(売上原価)」を記録していないので、決算でまとめて計算します。

例題:期首の商品の在庫(繰越商品)40,000円、当期の仕入500,000円、期末の在庫60,000円。売上原価を仕入勘定で計算する。

借方(左) 金額 貸方(右) 金額
仕入 40,000 繰越商品 40,000
繰越商品 60,000 仕入 60,000

1行目で、期首の在庫を仕入に足します(前期に買った商品も、当期に売ったぶんは当期の原価だからです)。2行目で、期末に売れ残った在庫を仕入から引いて、来期に繰り越します。左右の科目の並びが「し(仕入)・くり(繰越商品)/くり(繰越商品)・し(仕入)」になるので、「しーくりくりしー」と覚えるのが定番です。

この結果、仕入勘定の残高は40,000円+500,000円−60,000円=480,000円となり、これが売上原価です。

なお、2027年4月からの出題範囲では、商品を売るたびに売上原価を記録する方法(売上原価対立法)も3級に加わります。詳しくは簿記3級の2027年度改定で変わることで説明しています。

減価償却:建物や備品の価値の目減りを費用にする

建物や備品は、何年も使ううちに価値が減っていきます。この目減りを、使う年数に分けて毎年の費用にするのが減価償却です。今の3級では、毎年同じ額を費用にする「定額法」と、減価償却累計額という科目を使う「間接法」で出題されます。

例題:期首に買った備品(取得原価300,000円)を、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法・間接法で減価償却する。

借方(左) 金額 貸方(右) 金額
減価償却費 60,000 備品減価償却累計額 60,000

300,000円÷5年=60,000円が1年分の減価償却費(費用)です。備品の科目を直接減らさず、右に「備品減価償却累計額」を書くのが間接法です。累計額は、備品の価値を引く側の科目なので右に書く、と覚えておきます。期の途中で買った場合は、使った月数で割ります(たとえば10月1日に買ったなら6ヶ月分で30,000円)。

仕訳を早く覚えるための練習のしかた

仕訳を早く覚えるための練習のしかた

「科目のグループ」を声に出す

仕訳を間違える原因の多くは、左右のルールではなく、科目がどのグループかを取り違えていることです。前受金を資産だと思っていれば、左右は逆になります。問題を解くとき、「前受金、負債、増えたから右」と心の中で言いながら書くと、取り違えに気づきやすくなります。

間違えた仕訳は「理由」を一言で残す

間違えた仕訳は、正しい答えを書き写すだけでなく、「未払金と買掛金を取り違えた」「差額補充を忘れた」のように間違えた理由を一言で残してください。理由が同じ間違いは、同じ対策で減らせます。試験の前に見直すのも、この一言のリストだけで足ります。

1日に少しずつ、毎日解く

仕訳は、まとめて100問解くより、毎日10問解く方が身につきます。通勤や昼休みの数分でも、仕訳1〜2問なら解けます。スキマ時間の使い方はスキマ時間の勉強法でも紹介しています。

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よくある質問

よくある質問

Q. 仕訳は全部丸暗記しないといけませんか?

丸暗記は必要ありません。覚えるのは、5つのグループの左右のルールと、それぞれの勘定科目がどのグループかです。ルールがわかっていれば、初めて見る取引でも組み立てられます。ただし、「しーくりくりしー」のように決算で決まった形をとる仕訳は、形として覚えてしまう方が早いものもあります。

Q. 勘定科目の名前は、テキストと少し違っても正解になりますか?

日本商工会議所は「商業簿記標準・許容勘定科目表」を公表していて、標準の科目(A欄)のほかに、採点上許容される科目(B欄)を示しています。ただし表の注意事項には、問題文で科目の指定がある場合はその指示が優先されると書かれています。勉強では標準の科目名で覚え、試験では問題文で示された科目から選ぶのが確実です。

Q. ネット試験では、仕訳はどう答えるのですか?

日本商工会議所の案内によると、ネット試験の仕訳問題はプルダウンで勘定科目を選ぶ方式です。金額は数字だけを入力し、カンマや円マークは入れません。また、1つの設問で同じ勘定科目を借方・貸方それぞれに2回以上使うと不正解になります。詳しくは簿記3級のネット試験と統一試験の違いで説明しています。

Q. 前払金と前払保険料は何が違うのですか?

前払金は、商品を受け取る前に代金の一部を払ったときなどに期中の取引で使う科目です。前払保険料は、決算のときに「来期分の費用」を移すために使う科目です。どちらも資産ですが、使う場面が違います。

まとめ

まとめ
  • 借方=左、貸方=右。左右の合計は必ず一致する(貸借平均の原理)
  • 増えたら左に来るのは資産と費用だけ。負債・純資産・収益は増えたら右。減ったら反対側
  • 仕訳は「動いたものを見つける→グループを決める→増減で左右を決める」の3手順で組み立てる
  • 前払・未収は資産、未払・前受は負債。「将来もらえる」か「将来払う・提供する」かで決まる
  • 貸倒引当金は差額を積み増す。売上原価は「しーくりくりしー」。減価償却は間接法で累計額を右に
  • 間違えた仕訳は理由を一言で残し、毎日少しずつ解く

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