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ITパスポートの勉強を進めていて、計算問題のところで手が止まる人は少なくありません。「文系だから計算は捨てよう」と考える人もいますが、先に結論を書いておきます。
計算問題は全部を捨てるより、型の決まったものだけを確実に取るほうが安全です。ITパスポートには分野ごとの基準点があり、計算が多いテクノロジ系をまるごと落とすと、総合点が足りていても不合格になるからです。
この記事では、シラバス(Ver.6.5)に載っている計算のテーマから、稼働率、データの伝送時間、損益分岐点、2進数を中心に、公式と解き方を自作の例題で順に説明します。試験の数字はIPAの公式発表で確認したものです(2026年10月時点)。
ITパスポートの計算問題は捨てていい?

まず、試験の仕組みから見ておきます。ITパスポートは120分で小問100問、四肢択一の試験です。分野ごとの出題数は、IPAの案内で次のとおりです。
| 分野 | 出題数 | 主な計算テーマ |
|---|---|---|
| ストラテジ系 | 35問程度 | 損益分岐点、利益率、投資利益率など |
| マネジメント系 | 20問程度 | アローダイアグラム(日程の計算)など |
| テクノロジ系 | 45問程度 | 稼働率、伝送速度、2進数、情報量、確率など |
合格するには、総合評価点が600点以上(1,000点満点)で、しかも3分野それぞれの評価点が300点以上必要です。採点はIRT(項目応答理論)にもとづいて行われ、100問のうち総合評価に使われるのは92問です。合格点のしくみはITパスポートの合格点と採点のしくみで詳しく説明しています。
計算のテーマはテクノロジ系に多く、ストラテジ系とマネジメント系にも少し入っています。「計算はまるごと捨てる」と決めると、テクノロジ系だけで点を落とす範囲が広がります。とくにテクノロジ系はほかの用語問題も横文字が多く、苦手な人には計算以外でも失点しやすい分野です。計算で取れる問題を取っておくと、分野別の基準点に余裕ができます。
なお、計算問題が毎回何問出るかは年度や回によって変わり、IPAも公表していません。この記事でも「毎回◯問」という言い方はしません。
捨ててもよい計算、取りにいく計算
おすすめは、問題を2つに分けて考えることです。
- 取りにいく計算:稼働率、伝送時間、損益分岐点、2進数など。公式が1つか2つで、数字を入れれば解ける
- 後回しでよい計算:条件が長い文章題や、見たことのない設定の問題。本番で出会ったら、いったん飛ばして最後に戻る
型の決まった計算は、覚える量のわりに得点しやすい問題です。苦手意識があっても、この記事の4つの型だけは押さえておきましょう。
本番は手計算が前提。メモ用紙の使い方

ITパスポートはパソコンで受けるCBT方式ですが、計算は自分の手で行います。IPAのFAQによると、試験中に机に置けるのは、確認票、受験者注意説明書、会場で用意されるメモ用紙とシャープペンシル(ほかにハンカチ、ポケットティッシュ、目薬、水など)です。持参した筆記用具は試験室に持ち込めず、時計(腕時計を含む)も持ち込めません。
電卓については、IPAのFAQに個別の記載が見当たりませんでした。机に置ける物の一覧には入っていないので、手計算で解ける準備をしておくのが確実です。受験前にIPAの案内で確認しておいてください。
メモ用紙を使うときのコツ
- 問題番号を書いてから計算する:見直しで戻ったときに、どの計算か迷わない
- 単位を数字の横に書く:「Mバイト」「Mビット」「秒」など。伝送時間の問題は単位の取り違えで間違えやすい
- 小数は分数で考える:0.9×0.8のような計算は、9×8=72を先に出してから小数点の位置を決める
本番の画面に慣れておきたい人は、IPAが配布しているCBT疑似体験ソフトで一度操作してみると安心です。問題の後回し(見直しのしるし)をどう付けるかを試しておくと、計算問題を飛ばすときに迷いません。
よく出る計算の型と解き方

ここからは、シラバス Ver.6.5 に載っている計算のテーマを型ごとに説明します。例題はすべてこの記事のために作ったもので、IPAの公開問題の数値は使っていません。
1. 稼働率(直列・並列)
稼働率は「システムが使える状態にある割合」です。シラバスでは「システムの評価指標」の中に、稼働率・MTBF(平均故障間動作時間)・MTTR(平均修復時間)が並んでいます。
| 求めるもの | 公式 |
|---|---|
| 1台の稼働率 | MTBF ÷(MTBF+MTTR) |
| 直列(両方動かないと困る) | A × B |
| 並列(どちらか動けばよい) | 1 −(1 − A)×(1 − B) |
例題1:ある機器は、平均480時間動くと故障し、修理に平均20時間かかります。稼働率はいくつですか。
解き方:MTBFは480時間、MTTRは20時間です。480 ÷(480+20)= 480 ÷ 500 = 0.96。
例題2:稼働率0.9の装置Aと、稼働率0.8の装置Bがあります。直列につないだ場合と、並列につないだ場合の稼働率をそれぞれ求めてください。
解き方:
- 直列:0.9 × 0.8 = 0.72
- 並列:まず「両方とも止まっている確率」を出します。Aが止まる確率は 1 − 0.9 = 0.1、Bは 1 − 0.8 = 0.2。両方止まる確率は 0.1 × 0.2 = 0.02。使える確率は 1 − 0.02 = 0.98
例題3:稼働率0.9の装置を2台並列にし、その後ろに稼働率0.95の装置を直列につなぎました。全体の稼働率は?
解き方:並列部分を先に1つにまとめます。1 −(0.1 × 0.1)= 0.99。これと0.95を直列にして、0.99 × 0.95 = 0.9405。
つまずきポイント:並列で「0.9+0.8」と足してしまう間違いが多いです。稼働率は1を超えません。答えが1を超えたら式が違うと気づけます。また、直列にすると元の装置より下がり、並列にすると上がる、という向きを覚えておくと、選択肢をしぼるだけでも答えに近づけます。
2. データの伝送時間(ビットとバイト)
シラバスには、伝送速度(bps:ビット/秒)と、ビット・バイトなどの情報量、k・M・Gといった接頭語の表し方が入っています。伝送時間の問題は、この2つを組み合わせたものです。
| 覚えること | 内容 |
|---|---|
| 公式 | 伝送時間(秒)= データ量(ビット)÷(回線速度(bps)× 伝送効率) |
| 単位 | 1バイト = 8ビット |
| 伝送効率 | 回線速度のうち実際にデータを送れる割合。80%なら0.8を掛ける |
例題4:600Mバイトのファイルを、100Mbpsの回線で送ります。伝送効率が80%のとき、送り終わるまで何秒かかりますか。
解き方:
- データ量をビットにそろえる:600Mバイト × 8 = 4,800Mビット
- 実際の速度を出す:100Mbps × 0.8 = 80Mbps
- 割る:4,800 ÷ 80 = 60秒
例題5:30Mバイトのデータを、50Mbpsで伝送効率60%の回線で送ると何秒ですか。
解き方:30 × 8 = 240Mビット。50 × 0.6 = 30Mbps。240 ÷ 30 = 8秒。
つまずきポイント:ファイルの大きさは「バイト(B)」、回線の速さは「ビット(b)」で書かれることがほとんどです。最初に8を掛けてビットにそろえる、を手順として固定してしまいましょう。MとGが混ざっているときは、1G = 1,000M として先にそろえます(問題文に別の約束があればそちらに従います)。
3. 損益分岐点(ストラテジ系の計算)
シラバスの会計・財務の項目には「損益分岐点や利益率などの簡単な計算」と書かれています。損益分岐点は、利益がちょうど0になる売上高のことです。
| 求めるもの | 公式 |
|---|---|
| 変動費率 | 変動費 ÷ 売上高 |
| 損益分岐点売上高 | 固定費 ÷(1 − 変動費率) |
| 目標利益を出す売上高 | (固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率) |
| 損益分岐点の販売数量 | 固定費 ÷(1個の売価 − 1個の変動費) |
例題6:売上高1,000万円、変動費600万円、固定費300万円の会社があります。損益分岐点売上高はいくらですか。
解き方:
- 変動費率:600 ÷ 1,000 = 0.6
- 1 − 0.6 = 0.4(売上のうち、固定費の回収にあてられる割合)
- 300 ÷ 0.4 = 750万円
検算もしておきます。売上750万円なら変動費は750 × 0.6 = 450万円。750 − 450 − 300 = 0で、利益はちょうど0です。
例題7:同じ会社で、利益を200万円出すには売上高がいくら必要ですか。
解き方:(300 + 200)÷ 0.4 = 1,250万円。
例題8:1個2,000円で売る商品の変動費が1個1,200円、固定費が40万円です。何個売れば損益分岐点に届きますか。
解き方:1個売るごとに残るのは 2,000 − 1,200 = 800円。400,000 ÷ 800 = 500個。
つまずきポイント:固定費を「売上 − 変動費」で割るのか、「変動費率」で割るのか混乱しがちです。固定費は、売上から変動費を引いた残り(1 − 変動費率)で回収する、と言葉で覚えておくと式を組み立て直せます。
4. 2進数・基数変換
シラバスには「2進数の表現、基数変換の方法、2進数の加算や減算、表現可能な数値の範囲」が挙がっています。
10進数 → 2進数:2で割り続けて、余りを下から読みます。
例題9:10進数の45を2進数にしてください。
解き方:45÷2=22余り1、22÷2=11余り0、11÷2=5余り1、5÷2=2余り1、2÷2=1余り0、1÷2=0余り1。余りを下から読んで 101101。
2進数 → 10進数:右から順に 1、2、4、8、16…の重みを掛けて足します。小数点の右は 0.5、0.25…です。
例題10:2進数の1101.1を10進数にしてください。
解き方:8+4+0+1+0.5 = 13.5。
例題11:2進数の1011と0110を足すと?
解き方:10進数にすると 11 + 6 = 17。17を2進数にすると 10001。慣れないうちは、いったん10進数にして計算してから戻すほうが間違えにくいです。
表せる数の範囲:nビットで表せるのは2のn乗通りです。8ビットなら256通りで、0〜255を表せます。「アルファベット26文字を区別するのに最低何ビット必要か」なら、2の4乗=16では足りず、2の5乗=32で足りるので 5ビットです。
つまずきポイント:2のべき乗(2、4、8、16、32、64、128、256)を書き出せるようにしておくと、変換も範囲の問題も速くなります。メモ用紙の最初に書いておくのも手です。
5. そのほかの計算テーマ
シラバスに載っている計算のテーマを、ほかにもいくつか挙げておきます。どれも公式は短いので、一度手を動かしておけば十分です。
- 投資利益率(会計・財務):利益 ÷ 投資額。500万円の投資で75万円の利益なら 75 ÷ 500 = 15%
- アローダイアグラム(プロジェクトマネジメント):いちばん時間がかかる経路(クリティカルパス)が全体の日数。A(3日)→B(5日)→E(2日)と、A→C(2日)→D(4日)→E の2経路なら、10日と11日で、全体は 11日
- 画像のデータ量(画素・階調):横の画素数 × 縦の画素数 × 1画素のバイト数。1,920×1,080画素で1画素24ビット(3バイト)なら、6,220,800バイト(約6.2Mバイト)
- 確率・組合せ(基礎理論):5人から2人を選ぶ組合せは(5×4)÷(2×1)= 10通り。平均値・中央値・最頻値の違いもここに入ります
ここまで読んだら、実際の問題で手を動かしてみましょう。IPAの公開問題から、テクノロジ系の1問をその場で解けます。部品は分野までしか選べないため、計算問題が出るとは限りません。用語問題が出たら、そのまま腕試しとして解いてみてください。
計算が苦手な人の進め方

公式を見ても手が動かない人は、覚え方より「解く手順」を整えるほうが効きます。
公式を覚える前に「何を求める問題か」を言葉で書く
問題文を読んだら、メモ用紙に「求めるもの:送り終わる秒数」「わかっているもの:600Mバイト、100Mbps、80%」のように書き出します。これだけで、どの公式を使えばいいかが見えやすくなります。稼働率なら「両方動く必要がある?どちらかでいい?」と言葉にすると、直列か並列かで迷いません。
単位をそろえてから計算する
計算問題の失点で多いのは、計算そのものより単位の取り違えです。8ビット=1バイト、1秒=1,000ミリ秒、1G=1,000M。この3つを先にそろえてから式を立てる、を習慣にしましょう。
1回で解けなくても、同じ型を3日続けて解く
1日に何十問も解くより、同じ型を数日続けて解くほうが手順が体に残ります。たとえば月曜は稼働率を3問、火曜も稼働率を3問、水曜にもう一度。解説を読んでわかった気になった問題ほど、翌日に解き直すと手が止まることがあります。そこで止まった箇所が、本当の弱点です。
過去問の回し方はITパスポートの過去問の使い方で、毎日の勉強の組み立て方はITパスポートの勉強時間と独学スケジュールでまとめています。
計算は、解き方を一度「見る」と早く飲み込めます。学習アプリ「ごうかくっ!」は、カワセ先生の3分前後の動画レッスンで1テーマずつ学べて、ITパスポートのIPA公開問題を3年分(令和6〜8年度、計300問)解けます。毎日の「今日の3問」もあるので、同じ型を数日続けて解く練習に使えます。登録は無料です。
アルゴリズム・表計算の問題は別の型

テクノロジ系には、流れ図や擬似言語で書かれたアルゴリズムを読む問題や、表計算ソフトの式を読む問題も出ます。シラバスにも「簡単なアルゴリズムを流れ図や擬似言語で表現する方法」や表計算ソフトの項目があります。
これらは公式に数字を入れる計算とは違い、処理を1行ずつ追いかける問題です。解き方のコツは次の2つです。
- 変数の値を表にして、1行進むごとに書き換えていく(頭の中だけで追わない)
- 繰り返しは、最初の2〜3回だけ丁寧に追えば、パターンが見えることが多い
問題文が長いので、時間がかかりそうなら後回しにして構いません。IPAの公開問題で何問か解いて、問題の形に慣れておくのがいちばんの対策です。
よくある質問

Q. 電卓は使えますか?
IPAのFAQでは、試験中に机に置けるものは確認票、受験者注意説明書、会場で用意するメモ用紙とシャープペンシル(ほかにハンカチ、ポケットティッシュ、目薬、水など)とされています。電卓についての個別の記載は見当たらなかったので、詳しくは受験前にIPAの案内で確認してください。手計算で解ける準備をしておけば、どちらでも困りません。
Q. 数学が苦手でも受かりますか?
ITパスポートの計算は、四則演算と2のべき乗がわかれば解けるものが中心です。2025年度(令和7年度)の合格率は48.6%(IPA発表)。計算以外の問題で点を積みつつ、この記事の4つの型だけ取れるようにしておけば、計算が苦手でも合格は十分に狙えます。
Q. 計算問題に時間をかけすぎない方法は?
試験時間は120分で100問なので、1問あたり平均1分ちょっとです。1回読んで解き方が浮かばない計算問題には、見直しのしるしを付けて先に進みましょう。最後に残った時間で戻れば、ほかの問題を解く時間を削らずに済みます。
Q. 計算をもっと深くやりたくなったら?
ITパスポートの次の段階として、基本情報技術者試験ではアルゴリズムや計算の比重がさらに上がります。興味があれば基本情報技術者試験の解説も読んでみてください。
まとめ

- 分野ごとに300点以上が必要なので、計算をまるごと捨てるのは危ない。型の決まったものだけ確実に取る
- 本番は会場のメモ用紙とシャープペンシルで手計算する前提で準備する(電卓はIPAの案内で確認を)
- 稼働率は「直列は掛ける、並列は1から止まる確率を引く」。伝送時間は「最初に8を掛けてビットにそろえる」
- 損益分岐点は「固定費 ÷(1 − 変動費率)」。2進数は2のべき乗を書き出してから
- 苦手な人は、求めるものを言葉で書き、単位をそろえ、同じ型を数日続けて解く
試験全体の難易度や申込みの流れはITパスポート試験完全ガイドで、用語の覚え方はITパスポートの用語の覚え方で確認できます。





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