保育士試験には、他の資格にはない特徴が2つあります。誰でも受けられる試験ではないこと、そして合格した科目が3年間持ち越せることです。
この2つを知らずに調べ始めると、「受験資格があるのか」という段階でつまずいたり、逆に「1回で全部受からないと駄目だ」と必要以上に身構えたりします。
この記事では、受験資格の確認から実技試験の中身まで、順を追って整理します。
保育士とはどんな資格か

児童福祉法にもとづく国家資格
保育士は、児童福祉法に定められた国家資格です。保育所だけでなく、児童養護施設、乳児院、児童館などでも働けます。
この資格には名称独占があります。保育士でない人が「保育士」を名乗ることはできません。また保育所で働く際には、配置基準上、保育士資格を持つ職員の人数が定められています。
保育士になる方法は2つあります。指定された養成施設(大学・短大・専門学校)を卒業する道と、保育士試験に合格する道です。この記事では後者を扱います。
試験の基本データ
| 実施機関 | 一般社団法人 全国保育士養成協議会 |
|---|---|
| 受験資格 | あり(下記参照) |
| 試験回数 | 年2回(前期・後期) |
| 筆記試験 | 9科目(前期4月・後期10月ごろ) |
| 実技試験 | 3分野から2分野を選択 |
| 受験手数料 | 12,700円(+受験申請の手引き郵送料250円) |
| 合格率 | おおむね20〜30% |
| 学習時間の目安 | 100〜180時間 |
数値は2026年8月時点で確認できたものです。学習時間は一般に言われている目安です。日程・料金および受験資格の詳細は、全国保育士養成協議会の公表内容を必ずご確認ください。
まず受験資格を確認する
保育士試験は、誰でも受けられるわけではありません。ここが宅建や行政書士との大きな違いです。
基本となるのは「短期大学卒業程度」という水準です。代表的なパターンを挙げます。
- 大学・短期大学・専門学校(2年以上)を卒業している
- 大学に2年以上在学し、62単位以上を修得している
- 短期大学・高等専門学校の最終学年で、卒業見込みである
- 高校卒業後、児童福祉施設で2年以上かつ2,880時間以上の実務経験がある
最後の項目が重要です。学歴の条件を満たしていなくても、実務経験によって受験資格を得られる道があります。この場合は都道府県知事の認定が必要になります。
自分が該当するかどうかは、卒業年や学科によっても変わります。申し込みの前に、必ず公式の受験資格の説明を確認してください。ここを間違えると、勉強した時間がそのまま無駄になります。
試験の構成

筆記は9科目
| 保育の心理学 | 子どもの発達と心理 |
|---|---|
| 保育原理 | 保育所保育指針、保育の考え方 |
| 子ども家庭福祉 | 子どもと家庭を支える制度 |
| 社会福祉 | 社会福祉の理念と制度 |
| 教育原理 | 教育の思想と歴史 |
| 社会的養護 | 施設養護、里親制度 |
| 子どもの保健 | 健康管理、事故防止、感染症 |
| 子どもの食と栄養 | 発育に応じた食事、アレルギー対応 |
| 保育実習理論 | 音楽・造形・言語の基礎 |
各科目とも、満点の6割以上で合格です。
合格した科目は3年間有効
保育士試験の大きな特徴が科目合格制度です。合格した科目は、その年を含めて3年間有効になります。
つまり、1回目で5科目、2回目で3科目、3回目で残り1科目、という進め方が制度として認められています。試験は年2回あるため、3年間で最大6回の受験機会があります。
働きながら、あるいは子育てをしながら目指す人にとって、この仕組みは大きな助けになります。一度に全科目を狙う必要はありません。
教育原理と社会的養護には注意が必要
ひとつだけ例外があります。教育原理と社会的養護は、2科目セットで扱われます。両方を同時に合格しなければ、片方だけの合格は認められません。
この2科目はどちらも出題数が少なく、1問の重みが大きくなります。片方だけ取れて片方を落とす、という事態が起きやすい組み合わせです。同じ回で両方を確実に取りにいく準備が必要です。
実技試験は3分野から2つを選ぶ
筆記9科目すべてに合格すると、実技試験に進みます。
| 音楽に関する技術 | 課題曲の弾き歌い(ピアノ・ギター・アコーディオン) |
|---|---|
| 造形に関する技術 | 保育の場面を絵画で表現する |
| 言語に関する技術 | 3歳児向けに素話をする |
この3つから2分野を選択します。
実技試験の合格率は、過去10年(2013年〜2022年)の平均で82.5%とされています。筆記の合格率が20%前後であることを考えると、実技は比較的通りやすい関門だと言えます。
とはいえ準備は必要です。特に音楽を選ぶ場合、課題曲は事前に発表されるので、弾き歌いの練習時間を確保できるかを考えて選びましょう。楽器に不安がある人は、造形と言語の組み合わせを選ぶことができます。
合格率から見た難易度
保育士試験の合格率は、ここ数年おおむね20〜30%で推移しています。
この数字だけを見ると難関に映りますが、内訳を見ると印象が変わります。合格率を押し下げているのは筆記試験、それも「9科目すべてを揃える」という条件です。1科目ごとの難易度が極端に高いわけではありません。
科目合格制度を使って複数回に分ければ、1回あたりの負担は大きく下がります。実際、この制度を活用して2〜3年かけて合格する人は珍しくありません。
効率的な勉強法

科目をグループに分けて考える
9科目は、内容の近さでグループにまとめられます。
- 制度・福祉系(社会福祉/子ども家庭福祉/社会的養護)— 制度の名称と仕組みが重なるため、まとめて学ぶと効率が良い
- 子ども理解系(保育の心理学/保育原理/教育原理)— 発達や保育の考え方が共通する
- 実務系(子どもの保健/子どもの食と栄養/保育実習理論)— 具体的な知識が中心で、暗記の比重が高い
1回の受験で全科目を狙わないなら、同じグループの科目を同じ回にまとめると、学習の重複を活かせます。
保育所保育指針は繰り返し読む
保育原理をはじめ、複数の科目で保育所保育指針の内容が問われます。テキストで学ぶだけでなく、指針そのものに何度も目を通しておくと、出題の意図がつかみやすくなります。
実技は筆記の結果を待たずに始める
筆記の合格発表から実技試験までは、あまり時間がありません。筆記の手応えがあった時点で、実技の準備を始めておくほうが安全です。特に音楽を選ぶ場合、練習に時間がかかります。
取得後のキャリア
保育所が最も一般的な就職先です。公立と私立で採用の仕組みが異なり、公立は自治体の採用試験を受ける形になります。
児童福祉施設という道もあります。児童養護施設、乳児院、障害児入所施設など、保育所以外にも資格が活きる場は広くあります。
企業内保育所や院内保育室は、比較的規模が小さく、勤務時間が定めやすい職場として選ばれることがあります。
近年は保育士不足を背景に、処遇改善の施策が進められています。資格取得を検討する際は、自治体ごとの支援制度(就職準備金の貸付など)も調べておくとよいでしょう。
まとめ
- 保育士は児童福祉法にもとづく国家資格。名称独占がある
- 受験資格に条件がある。短大卒業程度、または児童福祉施設での2年以上かつ2,880時間以上の実務経験など
- 筆記は9科目。合格した科目は3年間有効
- 教育原理と社会的養護は2科目セット。同時に合格する必要がある
- 実技は3分野から2つを選択。合格率は過去10年平均で82.5%
- 全体の合格率はおおむね20〜30%。学習時間の目安は100〜180時間
この試験は、1回で決めなくてよい試験です。年2回の受験機会と3年間の科目合格を使えば、生活のペースに合わせて進められます。
まずは受験資格を満たしているかを確認してください。そこがはっきりすれば、次に何をすべきかが決まります。



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